1985年7月A日
バレーはスーパーリーグへ&仕事は週3日に

来月から“スーパーリーグ”という男女とも西オーストラリア州の最強5チームによって争われる新しいバレーボールのリーグ戦が始まる。レッドスターは男女ともにスーパーリーグの構成チームとなった。
このスーパーリーグを西オーストラリア州のトップグレードのリーグとし、その下にAグレード、そしてハイスクールのリーグという体制で当州のバレーボール人口の拡大、発展を計るということである。またそのスーパーリーグの中から最も優秀なメンバーを選抜し、年に一度、全オーストラリアの州対抗のリーグ戦にのぞむという。
そして、木曜日に練習、日曜日に試合というのがこれまでのレッドスターの週間スケジュールであったが、そのスーパーリーグの開始により、水曜日に練習、金曜日に試合というふうに変わる。
レッドスターはニュートンカレッジというこの国では珍しい私立のハイスクールの卒業生と在校生がメンバーで、総勢約110名の大組織である。自分はこれまで高校生のチームに入れられていたが、来週からは最高グレードのスーパーリーグで戦うシニアチームに入れてもらって練習することになった。
オレにも西オーストラリア州選抜チームのメンバーになれる可能性があるらしいし、ちょっとずつながらバレーのカンも取り戻しつつある。ここへきてやっとこさ、いっちょうやったるか、と本気で燃え始めてきた。
そんな事情により、スズキ氏に話をして、思いきって仕事を火、土、日の夜週3回だけにしてもらった。これで空くことになる時間にバレーと前々から行こうと考えていたPTC(パース・テクニカル・カレッジ)へ行くことができる。
これにより、これから生活の時間割は大幅に楽になろうが、収入は週270ドルから90ドルとなり、貯金はもうほとんどできそうにない。しかし、これからは昼はPTC、夜はバレーとレストランという三つを生活の柱としてやっていくことになり、時間の有効利用が可能となる。
自分にとっては相当思い切った決断だったが、あのままでは何のためにここオーストラリアまでやってきたのかわからなくなる。時間にゆとりを持たせることにより、少しは刺激の多い毎日になっていくことをと願う。
ノースロッジの連中もいいやつだけがいい雰囲気にまとまり始めて、家に帰ってビールを飲みながら、やつらとバカ話をするのが楽しくなってきた。
この国へ来て3ヶ月半。やっとのことで生活が楽しく生き生きとしたものになり始めたと言えそうだ。
1985年7月B日
パーステクニカルカレッジ入学

PTC(パーステクニカルカレッジ)で入学手続きを取ってきた。
で、1年間に学校に支払う費用が、しめてナ、ナント5ドル(500円!!)というのには、まさに口が開きっぱなしになったほどびっくりさせられた。
その5ドルは入学に必要な諸手続きに充てられるだけで、授業料は政府が全額補助を与えて、生徒は一切支払う必要がないということだが、信じられない話ではないか。
オーストラリア政府は1975年のイギリスのEC加盟を機に1970年代後半以降これまでの移民政策を変換し、旧英国連邦以外の国々からの移民をも積極的に招き入れる政策を取り始め、非英語圏から来た移住者たちにはきわめて寛大な対応を取っている。
テクニカルカレッジとはいわば州立の専門学校のようなところで、大雑把に言って、
・若年層の技術修得の補助
・生涯教育の充実
・移民者に対する英語教育及びこの国の社会への同化教育
といった三つの点に主眼が置かれているようだ。
われわれワーキングホリデイビザによる滞在者も、この西オーストラリア州では短期移住者と見なされ、この学校に入れてもらったということだ(シドニーのあるニューサウスウェールズ州、メルボルンのあるヴィクトリア州などでは、ワーキングホリデイビザによる滞在者はこの恩恵を預かれないと聞いた)。
このあたり国の広大さだけでない、日本の超ウルトラ閉鎖主義とはまったく比較にならない「ひと」に対して寛容なこの国の姿勢に大感謝だ。
1985年7月C日
ビクターと離婚

ロッジの仲良し連中の一人にビクターという30才の物静かな二枚目がいる。27才の時に結婚しいま2才の女の子をもうけたが、現在離婚の争議中で他に行くところもなく、このロッジに居座っているとのことだ。
オーストラリアへ入国以来、周りにその手の話に事欠かないため、離婚という不穏なものにもなんとなく慣れっこになってしまった感があるが、やはりやつのしょげかえった様子にはどうしても同情的にならざるをえない。当初会った時はなんだ冷たいやつだなという印象を持ったが、今になって思えば、ただ心にそれだけの余裕がなかったゆえのことだったのかもしれない。
あるニュージーランド人が、オーストラリア人は最近ますます小さなアメリカのようになりつつあり、なんでもかんでもアメリカの物真似をやりつつあると言っていたが、結婚した人たちの半分が離婚するという、どちらかといえばあまり感心しないアメリカの最近の傾向さえも、このオーストラリアは影響を受けているのだろうか。
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