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1985年7月D日
豪快な男ジョーのこと

わがノースロッジは、近くに長距離バスのターミナルがあるということと敷金が不要であるということから、東のシドニーやメルボルンから流れてきたやつらが、このパースで定職を得てアパートないし持ち家に落ち着くまでの仮の宿として使用することが多いが、メルボルンから来たジョーもそんなやつらの一人である。
このロッジのオレたち8人のグループの中では一番新しいメンバーでありながら、すでにやつはボス格。身長190センチのオランダ系の大男で、性格も陽気で豪快。Good Old Aussieというのがやつにぴったりの表現だ。
といって、やつは人に迷惑をかけることは絶対にしない。よくできた男だと思う。
ジョーは毎朝10時ごろ、オレがキッチンで朝食を取っていると、右手を上げて、
「Hello, Ken !」
とあいさつしながら、フラフラと起きだしてくる。夜以外は生活時間がよく似ているせいか、やつとはオレの愛車で最近あちこちよく行動をともにすることが多くなった。
世界各国を旅行して回ることが生きがいで、西オーストラリアの鉱山かどこかで出稼ぎして小金を貯めて、またどこかの国へ旅に出て行くんだという。現在31才ながら、まだまだ若いパワーを秘めた、興味の尽きない男である。
近くのユースホステルにいたイギリスの女の子と一時仲良くなっていたが、彼女がダーウィンへ発つ時、やつはきわめてあっさりとバイバイ。結婚などするつもりは当面まったくないという。
いつか日本へ行きたいというし、こいつなら何年たってもまた会いたいと思い続けるだろう。
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